公開日 2026年08月18日
更新日 2026年08月18日
「トラウマ」という言葉、最近はかなりよく聞くようになりました。
でも、
「それって本当にトラウマなの?」
「もっと大変な経験をした人もいるし」
「こんなことで傷ついている自分が弱いのかな」
と思う方も多いと思います。
私は、トラウマをものすごく簡単に言うなら、
“心に残った傷”
だと思っています。
そしてもう少し日常的に言えば、
思い出すと、今でもしんどくなること。
そんなふうに考えてもいいと思っています。
大きな出来事だけがトラウマになるわけではありません
トラウマというと、
事故。
災害。
犯罪被害。
虐待。
性被害。
そういう、とても大きな出来事を思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、そうした経験が深い傷になることはあります。
でも、心に傷として残るのは、それだけではありません。
子どもの頃に何度も否定されたこと。
みんなの前で強く恥をかいたこと。
親から繰り返し言われた言葉。
学校で無視されたこと。
友達との関係。
受験での経験。
大切な人との別れ。
自分では「そんな大したことじゃない」と思っている出来事でも、今の生活に影響していることがあります。
逆に、とても大きな出来事を経験しても、それが必ず長くトラウマとして残るわけでもありません。
だから私は、
出来事の“大きさ”だけでは、その人がどれだけ傷ついたかは分からない
と思っています。
「もう昔のこと」なのに、身体はそう思ってくれないことがあります
頭では、
「もう終わったこと」
「今は安全」
と分かっている。
でも、似た場面になると急に苦しくなる。
心臓が速くなる。
身体が固まる。
怖くなる。
イライラする。
人を信用できなくなる。
何度も同じことを思い出す。
あるいは、思い出さないようにずっと避け続ける。
こういうことがあります。
不思議ですよね。
出来事はもう終わっているのに、心や身体の一部だけが、
「まだ危ないよ」
と言い続けているような感じです。
でも、その反応はあなたを困らせるためにできたわけではない
ここは、私はとても大切だと思っています。
今は困っているその反応も、
もともとは、あなたを守るために身についたものだったのかもしれません。
たとえば、一度ものすごく怖い経験をしたら、
「同じことが起きないように気をつけよう」
と身体が覚える。
人に傷つけられ続けたら、
「簡単に人を信用しないほうがいい」
と学ぶ。
怒られることが多かったら、
「相手の顔色を早く読まなきゃ」
と身構える。
危険なときに動けなかったなら、身体が固まることだってあります。
そのときのあなたにとっては、
それが生き延びるために必要な反応だった可能性があります。
だから私は、
「その反応、いらないからすぐ消しましょう」
とはあまり思いません。
その反応には、その反応なりの理由があるからです。
だから「すぐに楽になります」とは言いません
私は、トラウマは簡単に全部消せます、とは言いません。
何年もあなたを守ってきた反応を、
「今日からいりません」
と言われても、心も身体も困りますよね。
「本当にもう安全なの?」
「これを手放して大丈夫?」
と確認する時間が必要なこともあります。
だから、少しずつです。
安全を確認しながら。
その人のペースで。
必要なら立ち止まりながら。
「もうこの反応をずっと使わなくてもいいかもしれない」
と、心や身体が少しずつ学び直していく。
私はトラウマケアを、そんなふうに考えています。
でも、楽になる方法はちゃんとあります
ここまで読むと、
「じゃあ一生このままなの?」
と思うかもしれません。
そんなことはありません。
トラウマには、いろいろなケアの方法があります。
その人に合う方法はそれぞれ違います。
それを提案していくのが私の仕事だと思っています。
そして、とても大切なのは、
「忘れること」だけが回復ではない
ということです。
出来事を思い出す回数が減る人もいます。
思い出しても以前ほど苦しくなくなる人もいます。
「あのことはあった。でも今の私は大丈夫」
と思えるようになる人もいます。
人との関係が少し楽になることもあります。
身体の緊張が減ることもあります。
眠れるようになることもあります。
回復の形はひとつではありません。
「あの反応があったから、ここまで来られた」と考えてみる
私は、トラウマ反応をただの“悪い症状”として見ることはしません。
なぜなら、その反応があったからこそ、ここまであなたが自分を守ってこられたのかもしれないからです。
警戒していたこと。
人と距離を取ったこと。
何度も確認したこと。
泣いたこと。
怒ったこと。
何も感じないようにしたこと。
そのときは、それが必要だったのかもしれません。
だから、
「こんな反応をする自分はおかしい」
ではなく、
「これ、私を守ろうとしてくれてたのかもしれないな」
と考えてみる。
それだけでも、少し見え方が変わることがあります。
そして今、
「もう少し楽に生きたい」
と思っているなら。
今まであなたを守ってくれたやり方に、
「ここまでありがとう。これからは別のやり方も試してみようか」
と少しずつ伝えていく。
トラウマケアって、そんな作業でもあると私は思っています。
トラウマは、大きな出来事を経験した特別な人だけのものではありません。
今のあなたを苦しめている過去の経験があるなら、それをケアしていい。
そして、
「ずっとこうだったから、これからもずっとこう」ではありません。
時間がかかることはあります。
すぐには変わらないこともあります。
でも、楽になる方法はちゃんとあります。
ここでは、そんなトラウマの話を、できるだけ難しくなく、実際の生活に近い言葉で書いていこうと思っています。

