公開日 2026年10月20日
※ 性暴力について触れる記事です。読んでいてつらくなったら、いつでも閉じてください。
9月に開かれた日本認知・行動療法学会で、ポスター発表をしてきました。
テーマは「レイプ神話」です。
当日は、レイプ神話を減らしたい、性犯罪を少しでも減らしたいと考えている研究者の方たちから、たくさんお声かけいただきました。
いろいろな方とお話しできて、とっても楽しい時間でした。
臨床でみなさんとお会いできる時間も素敵ですが、研究について話す時間も、私にとっては大切な時間です。
レイプ神話って何?
レイプ神話とは、性暴力についての、間違っているのに広く信じられている思い込みのことです。
たとえば、こんな考えです。
「本当に嫌なら、抵抗できたはず」
「アザも傷もないなら、本当には起きていないんじゃないか」
「飲み会で二人きりになったのだから、女性にも落ち度がある」
どれも、どこかで一度は耳にしたことがあるかもしれません。
でも、どれも事実ではありません。
怖い目にあったとき、体が固まって動けなくなるのは、ごく自然な反応です。
声が出ないこともあります。
傷が残らないことも、めずらしくありません。
そして、どこで、誰と、何を着ていたとしても、それは被害者の自由であって、たとえばどんなに派手な服装をしていたとしても、加害をしていいことにはなりません。加害をした責任は当然加害側にあります。
今回の研究にたどり着くまで
始まりは4年前です。
世界で最も使われているレイプ神話の尺度「IRMA」をもとに作られた、当時最新の「REAL尺度」を知りました。
そして、その原著者と早速連絡を取って(英語は苦手ですが、こんな時の行動力だけはあります)、彼女と一緒に日本語版を作らせていただきました。
偏見を減らしたいと思ったとき、まず「測れるようにすること」が第一歩だと考えたからです。現在地を知るところから始まると思ったのです。
そして、アメリカと比較してみた結果。
日本は、アメリカの約7倍も高い得点でした。
あまりの違いに驚きました。これはNHKの朝のニュースでも取り上げていただきました。
ここから、もっと国際比較をしたい。
そして作成したREAL尺度が本当にしっかりとした尺度であるかも確かめたい。
そう考えたとき、やはり世界で最も使われているIRMAの日本語版も作るべきだ、と思ったのです。
ここには共同研究者である岡部先生からお声かけをいただいたことも大きいです。お声掛けいただいたこと、本当に感謝しています。そして、岡部先生と共同でIRMAの日本語版を作りました。それを18歳から39歳の女性の方に答えていただいて、REAL尺度と比べてみました。
それが今回の研究です。
結構まどろっこしいことをしているように見えるかもしれません。でも、一歩ずつ、いろいろな角度から確かめていく。
これが、研究の面白さの醍醐味だったりします。
そして、やはりREAL尺度と同じような形が見えてきました。
日本では、どんな思い込みがあるのか
日本のレイプ神話の中身は、大きく2つです。
1つめは、「それは本当はレイプじゃない」という思い込み。
抵抗しなかったから。
「ノー」と言わなかったから。
怪我をしていなかったから。
そうやって、起きたことを小さく見ようとする考えです。
2つめは、「女性の側に非がある」という思い込み。
服装や行動に落ち度があった、という考え。
そして、「あとで後悔して嘘をついているのでは」という考え。
海外の研究では、「女性にも落ち度がある」と「女性は嘘をついている」は、別々のものとして扱われています。
でも日本では、この2つが分かれず、ひとまとまりの「女性の側に非がある」として受け取られている可能性が見えてきました。
なぜ、この研究をしているのか
私は長く、犯罪被害に遭った方々の支援に関わってきました。
その中で何度も耳にしたのが、こんな言葉です。
「私が悪かったのかもしれない」
「ちゃんと抵抗しなかったから」
「あの場所に行った私がいけなかった」
レイプ神話は、周りの人の中だけでなく、被害にあった方自身の中にもあります。
そしてそれが、自分を責める声になります。
だから、私はこう考えています。
レイプ神話を知ることは、被害にあった方が、自分を責めなくていいことにつながる。
「あ、これは思い込みだったんだ」と気づけるだけで、少しだけ、息がしやすくなることがあります。
そして、もうひとつ。
周りの人が正しい知識を持つことは、二次被害を防ぐことにつながる。
勇気を出して話した相手から「なんで逃げなかったの?」と言われたら、もう誰にも話せなくなります。
実際、レイプ神話を強く信じている人ほど、性被害を相談しない傾向があることも分かっています。
家族や友人、職場の人から「あなたも悪いのでは?」と言われてしまったら。
それだけで、回復の道のりはかなり遠くなり、被害者の心は深く傷つきます。
本当は、被害そのものがなくなってほしい。
でも、せめて。
被害にあっても、被害者が責められない社会になってほしい。
そんな気持ちから、ぼちぼち研究も続けています。
これから
今回は若い女性の方だけの調査でした。
これからは、もっと幅広い世代でも確かめていきたいと思っています。
そして、日本のレイプ神話の形を踏まえた予防教育や、正しい知識を届ける活動につなげていきたいです。実は、レイプ神話を軽減する動画も作成しています。これから効果検証もしていきます。
このブログも、その小さな一歩のつもりで書きました。
共同で研究してくださった岡部友峻先生、清水栄司先生、そして調査にご協力くださったみなさま、ありがとうございました。
もっと詳しく知りたい方は、researchmapにポスターを掲載しています。
発表ポスター(researchmap)はこちら
今、誰にも話せずにいる方へ。
性犯罪・性暴力の被害については、ワンストップ支援センター(#8891)や、警察の性犯罪被害相談電話(#8103)でも相談できます。
今、身の安全が脅かされている場合は、迷わず110番を。
Katarina Labでは、性暴力の被害にあった方のカウンセリングも行っています。
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Katarina Lab(千葉市)
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